フランク・ウイン著 小林頼子、池田みゆき訳
20世紀最大の贋作事件。
1945年の終戦によりナチスドイツが奪った美術品の数々が戻って来た。
その中から、なんとあのフェルメールの作品が数多く発見される。
一体これはどうしたことなのか、誰が関わったのか。
そこに名前が上がったのが、ファン・ハン・メーヘレンという美術教師。
彼は6週間もの間収監されている間にこれを言うべきか、否かに
悩まされます。
『イク・ベン・エン・フェルファルサー(私は贋作者です)』
この贋作という言葉にみな唖然として、信じません。著名な鑑定士も
これは本物だと疑わないのです。しかし、メーヘレンは本当に偽物を
描いた事を証明します。実際にみんなの前で描いてみせます。
そして、その贋作だという作品を今も有名な美術館は展示しています。
ボイマンス美術館には『エマオの食事』。
D・G・ファン・ビューニンゲン・コレクションの『最後の晩餐』
アムステルダム国立美術館所蔵の『キリストの足を洗う』
そして、贋作だとわかっていても、自分で所蔵しているコレクターも
多数います。
こんな数奇な運命に翻弄されてしまう彼の才能というのは何なのでしょうか。
普通に自分の絵を描いては売れないのでしょうね。メーヘレンは身持ちの悪い
男でした。そして、お金に困ってもいました。フェルメールの絵だという事で
高額のお金を稼ぐ事が出来ました。彼はアルコール、モルヒネ、タバコに
毒されていました。彼の類稀な才能が惜しい。単に美術教師で普通に貧乏な
人生でも良かったのでは・・・。彼の美術の時間にちょっと描いた鹿の絵が
余りに素晴らしいので、今もオランダの美術の教科書にのっているそうですね。