Acousphere Live 2016.10.11 吉祥寺Star Pine's Cafe

2016年10月11日(火曜) 吉祥寺スターパインズカフェにてスペシャルライブイベント「Acousphere with Friends」を開催します! 
Acousphere Recordに所属するアーティストが一同に集うライブをお楽しみください!
日にち:2016年10月11日(火曜)
場所:吉祥寺スターパインズカフェ 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
出演:Acousphere / Acoustic Sound Organization / Aerial / Sonascribe
時間:Open 18:00 / Start 19:00
前売り ¥3,900+1drink / 当日 ¥4,900円+1drink
詳細はこちらをご覧下さい!

2012年10月28日日曜日

《矛盾を畏れない強さ、不合理を温存する深さ》

世界的免疫学者が綴るイタリア美術のエッセイ
『イタリアの旅から』は季刊雑誌『感染、炎症、
免疫』に5年に渡って連載された。
キッカケは癌で病床にあった画家でありイタリア
をこよなく愛していたN君へその風光を綴って書き
送ろうとしたのがはじまりだっだ。・・・という。

科学者でありながら、優れたエッセイストである
多田富雄さんは名文家でもあります。
フェラーラの章の書き出しが良い。
《お城は街の真ん中に立っている。
周囲を堀で囲まれ、正面の凱旋門に入るのも、はね橋を
渡らなければならない。私は通りを一本隔てたバーで
珈琲を飲みながらこの孤独で陰鬱な城を眺めていた。
城の前は人通りも多く、広場は車でうずまっているが、
城だけはひっそりと静まり返っていた。4月というのに、
重く垂れ込めた空には、鳥さえ飛んでいなかった。堀の
水は低く、動かず、暗渠は濃い暗い影となっていた。
そらの上を時々、ゴーッと風が吹いた。》

西欧においてのすべての美術はキリスト教が濃く土台に
なっている。私はたまたまフランシスコ会の経営する
ミッションスクールで6年間過ごした経験から、多少は
分かっている積りになっていたが、いやいや、何も
知らなかった。
この免疫学者の理解の深さには驚きます。この人の知識の
多さは学問という領域で頑張っておられる方の調べ方の
巧さなのでしょうか。イタリアの丸ごとの知識を披露
してくれていて、ちょっとした解説書でさえもこの人の
本はには及ばないのでは・・・と思います。
イタリアを旅行なさる方は絶対これを携えていくべきで
しょうね。
そして今、西欧の宗教の教義や精神を眺める時、科学
精神や合理主義とは裏腹の矛盾を畏れない強さや、不合理を
温存する深さを知る。・・・とおっしゃっておられます。
私はこの二つの言葉に感銘しました。
"矛盾を畏れない強さ、
不合理を温存する深さ。"
西欧の精神は矛盾や不合理をつつかれても怯むどころでは
ないほどの圧倒的歴史の長さや、建築の巨大さ、美術の
絢爛さが溢れているんですね。

そして、ここで、始めて知った、遺伝病の話が面白い。
"タラセミア"
地中海性貧血と呼ばれるこの遺伝病は重症の貧血を起こす。
赤血球が酸素を運ぶために持っているタンパク質として
ヘモグロビンがある。タラセミアはこのヘモグロビンを作る
遺伝子に欠陥があって、赤血球の形が変わり、壊れやすく
なる為に起こる貧血である。これがある為に、このサルジニア
原住民はマラリアで絶滅しなかったんだそうです。
このために、生き残った人はタラセミア遺伝子を濃縮して
きた。この地方の人は20%近くの住民が貧血症状を呈する
そうです。
そのため、ここには遺伝子研究所が出来たり、遺伝子の研究会が
開催されたりすることが多いそうです。
この人ならではの旅行書です。