ヘアー雑誌を何となく眺めていたら、"BAD HAIR"という言葉が眼についた。恐らく、古い言葉
なのかも知れないけど、白人の"GOOD HAIR"の対極にある黒人のそれ・・・という意味らしい。
へえ~、そうなんだと考えながら、いや、しかし、今はどうだろう。・・・というか、私はそんな単純に
悪いとは思わない。
先日、《ベスト・キッド》を観ていて、その主人公の男の子がとっても可愛くて、綺麗な顔をして
いるのでお話の流れはそっちのけで、ひたすらその美形を楽しんでいました。その子は黒人特有
のあのアフロヘア~とでも言えそうな髪の毛を、全て前から後ろへと3センチくらいの幅で三つ編
みにしているのです。
《こんなにするのに,何時間かかるのだろう》とか、
《洗うのは何日に一度なのか》とか、
《寝るときって、痛くないのだろうか》とか、
ひたすら思って観ていました。そして、その映画のエンドロールを観ていたら、あのウイル・スミスが
出ていて、そうか、あの俳優の息子さんなんですね・・・と納得。
昔?日本語教師をしていた頃、眼の前に金髪碧眼の女性が座ると私は女ながらも、ドキドキして
しまいました。その女性はいつもその長い髪の毛を指にからませながら、ノートをとっていましたが、
いつも最後はその長い髪の毛を後ろにクルクル回して、鉛筆一本を滑り込ませて、納めてしまう。
ひえ~ですね。日本人の直毛ではこうはいかない。欧米系の人の髪の毛は絡まりやすいように
出来てるみたいですね。
ひたすら、髪の毛をいじって・・・というか弄んで時間を過ごすというのも人間に与えられた特権
いや女性に与えられたそれかと思えば、さにあらず。最近よく行く喫茶店の店主は40才くらいの
お兄さんなんだけど、この方は凝り性。高校生の頃、ほとんどモヒカンのような(?)・・・実はそういう
ヘアースタイルをどう言うのか分からないのですが、まあその店主に言わせれば、盛んに両手を
耳の上からまっすぐ、上にあげながら、説明するし、ハードクリームで上に立つようにするんだ・・・
というからその辺の髪の形なんだろうと思う。で、これをするのに3時間くらいかけて気に入るまで
するんだそうです。
『でね、気が付いたら、今から学校に行っても、お昼だし、今日はもういいかあ~、という訳で
行かないんです。』
『でも、そんなにグズグズしていたら、親になんとか、言われない?』
『うち、共働きだから、朝は先に出ていっちゃうんですよ。』
『なるほどねえ。ははは。』
そんなでも一応大学は卒業したみたいだから、心配することはないのですねえ。で、社会に出て、
日本のあちこちに行くようになり、何年か働いて、情報を集めてから、最近喫茶店を始めたのだそうです。
で、出先で良い珈琲茶碗を見つけると一客づつ買い集めて、その機会を虎視眈々とねらっていた。
凝り性というのはこういう処にも現れるのですね。この人、新潟の織元に行って、高級なネルを買い、
ネル・ドリップのそれに使うべく、あの三角形の形に切って作り、あの茶こしの上のネルの生地を
からませるべく丸い取っ手付きの金具を燕や三條のカトラリーを作る会社に頼み、奥さんにその
ネルをつけてもらって、可愛いネル・ドリップの道具を作ってしまった。
ある日、私はどんなふうに珈琲を淹れているのだろうと、真ん前に座ってみていた。
小さい、本当に小さい、一杯ぶんを淹れたら、もう入らない・・・という感じの可愛い、可愛い、小さい
三角のネルの中に珈琲をセットし、お湯をチョロチョロ淹れている。それも眼の高さに上げてお湯を注ぐから、
下の器にきちんと受けられているのか、心配になる。残念ながらそこまでは見えない。
でも、横から見ていると徐々に粉が盛り上げってくるのが分かる。ネルの三角のドリップの上に粉が
又三角に盛り上がってくるが、決して、こぼれるわけではない。美しい。
食べられるかどうか、とか、儲かるかどうか・・・より、好きかどうか・・・のほうがやっぱりたいせつなんですね。
そして、好きなことをやっている間は本当に幸せなんですよね、周りがなんと言おうと。