これは凄い経験。
6月1日の夜に入院して17日の手術が終わる
まで、飲んでるけど、食わず、食わずの
断食修行。
叡山には9日間の断食断水不眠不臥という
人体保持の限界を越える行があるらしい。
叡山には『法曼院政所』がある。
この僧房の主が光永澄道師で、この修行を
無事終えたことで、
『北嶺大先達大行満大阿闍梨』
という大変凄い、称号を頂いたそうだ。
断食を始めてから、毎朝、血液検査のために“血”を
抜かれるのを辛い思いで見送るのだが、返ってくる
返事は『まだ、いい数値が出てないから、』と
食事無し。
なんでも食事をすると消化液を出そうとして消化器官
が動き始めるから、激痛が起きるんだそうだ。
でもねえ、食べてないんだから、チョットの血液でも
惜しい。
この間、口から何も食べなかったら、嚥下能力が落ちる
のではないだろうかと、ひとり勝手に心配になり、お茶と
お水だけをチビチビ口に含んではゆっくり、ゴクンと
やっている私。
何て可哀想なんだ。
それも病棟の私の病室から一番遠い給湯器から、
点滴を下げるあのガラガラを押して行って、そっと
運んでくる。
最初はあまり栄養の豊富ではない点滴が入っていたらしく
一日400kカロリー。
流石に10日目にふら〜として来て、
『もう、ダメ。フラフラしてトイレにも行けない。』
担当の先生が真剣な表情で
『もっと高カロリーの点滴に変えましょうか。』とのたまう。
何だもっと美味しいのが、いやもっと、身体にいい点滴が
あるんじゃないの。
早くやってよ、と思いつつ、なんで思い悩んだように
話すのか。
色々考えてみた。
一つ、この点滴は非常に高い、貴方の経済力では難しい
とでもいうのか。
二つ、う〜ん、思い浮かばない
で、聞いてみたのだが、この高カロリーの点滴は濃度が
高いために大体の人が血管が痛いと反応するらしい。
処が、だ。
私全然痛くない、と言うか、そう思おうと努力した結果か。
看護婦さんが観に来ては心配そうに“痛くないですか？”
と聞く。
はは〜ん、かなりの人が痛いと言って、途中でやめるらしい。
17日に胆石が一杯詰まった胆嚢を切除して、25日に退院した
のだが、
私自身、何か悟ったかと言えば、人体の不思議を発見した
位。
食べてない時は、垢もあまり出ない。身体は汚れにくく、
洗髪はしないでも、サラサラしている。
しかし、皮膚はザラザラしてくる。
食べていないのに、少量のトロッととした便がでる。
人によって答えが違い、
『前からの便が溜まっていたのが、でるんですね。』とか、
『細胞が剥がれて便になるんですよ。』という人もいた。
そして、17日も食べないことに意外に淡々と耐えられた。
叡山の大阿闍梨のような悟りは決してひらけないが、
今、以前とは違う自分に出逢いたいと一生懸命考えている。
