ニューヨーク・マンハッタン島
マンハッタン島を買い取ったのはオランダ人というのはよく知られて
いますが、ここをたったの60ギルダーで買い取ったのだと司馬さんが
書かれています。驚きです。
一ギルダーはオランダ本国での石くれ一個の値段。オランダには石が
ないためスイスなどから輸入したのだそうです。その石くれは赤ちゃんの
頭ほど。その石くれ60個がマンハッタン島の値段。無論その時は現金
ではなく、60ギルダーぶんのガラス玉や酒類、雑貨類などだったそうです。
流石に司馬さんも正確を記す為に『この事はライデン(オランダ)市役所
で確かめた。』と書いておられます。司馬さんは必ずその出典を挙げて
史実を述べていますが、こんな素人が言うような言い方で『ほんとうです。』
と言っているのは珍しいですね。読んでいる私もクスッとしてしまいました。
さて、このオランダがアメリカ開拓を目的とした西インド会社を作ったのが
1621年。マンハッタン島を買い取ったのが、1626年。この頃の日本は徳川
家光の時代で鎖国が行われる数年前なんですって。この頃は日本人も
海外発展をしていて、播州高砂の徳兵衛という者が天竺(インド)まで行って、
貿易をしていたし、山田長政もシャム(タイ)で活躍していたそうです。
そういう世界の雰囲気の中でオランダがマンハッタン島を買い取ったの
ですねえ。領土が狭く、海面よりも低い国土をあれやこれやの苦心で生活
していたオランダ人にはこの岩盤が強くて広い土地をどう観たのでしょうか。
ハンマーで叩いても容易に割れない土地をインディアン語で"丘からなる島"
と言うのだそうですが、この時代のインディアンがこんな安値で売ったという
のは『インディアンの心が、青空のように大きかったという証拠である。』
と司馬さんは感嘆しています。
この頃はインディアン語はアルゴンキン語だったそうです。
『よろしいその値段で手を打とう。』とアルゴンキン語で言った筈とおっしゃって
います。
現にその名が残って、『アルゴンキン・ホテル』が残っているのだそうです。