いいですね。
文章の流れが素敵です。
久しぶりにいいなという作家に
出会った感じです。
で、朝吹真理子さんが
《この人の文章大好き》
と言っているほどだからいいのかな?
と思って手にとったのが、この本。
《もののはずみ》は生活の周辺にある
色々な生活小物などや雑貨を中心に
その時々の心のありようやそれに
まつわる小さな物語を綴っていて秀作です。
フランス文学者らしく、フランスの街角で
出会った骨董屋さんや物との付き合いの様子
が美しく語られています。
私が特に好きで、素晴らしい筆の運びだと
思うのは最後のほうに出てくる。
《冷えた心をあたためる器具》
というところ。
出だしから思わずのめり込んでしまいました。
《ずいぶん前のことらしいのですが、
・・・薄汚れた大きな車輪みたいな
ものを抱えてふらふらふらふら頼りなげに
歩いている眼鏡の男の人がいて、それが
あなたにとてもよく似ていた、いや、ご本人
としか思えなかった、という話しを友人から
聞いたのです、そのようなご記憶はおありで
しょうか、と仕事で付き合いのある方から
証人喚問ふうに問われてめんくらいながら
、ははあ、じゃあ、たぶんあの日だろうな、
と思い当たる節があった。・・・》
と6行ぜんぶが一つの文章になっているのだけど、
これが良い。
全部で50篇くらいですが、それぞれ楽しく
読ませてくれます。ちょっと、人を待つ間に
読んでほのぼのするのがいいかもしれませんね。