『お薬飲みましたか?』
『あっ、今飲みます。』
予約の時間にやや遅れて行った病院の待合室。
先日処方されたセロケン?確かこんな名前の薬。
検査の前1時間に、飲んで脈拍を落とすのだそうで、
暫く静かに座っていなければいけないらしい。
ここの処、かなり蒸し暑い日が続いたせいかなんだか
息苦しい。そして、酸素を十分に吸ってないような、胸
苦しいような、なんせ疲れる。
で、前に手術してから、3年ぶりに検診を受けた先生
から、そろそろ観てみますか?・・・と言われ、念のため。
心臓と肺の検査をする事にしたのだけど。
で、お隣の同じ年頃のおばちゃんも神妙に座っていたの
だけど、
『あ~、座っているだけだと疲れる~。』と立ち上がって
ウロウロし始めた。
そこで、初めて私と眼が合い、思わず話しかけてしまった。
『お宅もですか?』
『ええ、私は2時半。』
『私は3時。じゃ、私の前ですね。』
そこへ、さっきの看護婦さんがやって来て、隣のおばちゃんの
脈が落ちたかを調べに来た。
『60・・・変ですねえ、中々落ちないですねえ。
もう暫く待っていて下さい。』と戻って行ってしまった。
そこから、お互い病歴の自慢話。この歳になると、病気や手術の
一つや二つはあって当たり前。で、件のオバちゃんが話し始める。
『52の時、乳がんをやってねえ。』
『52ですか、若いですねえ。その時はどうでしたか?』
『別に、そうなんだと思って、治しましたよ。』
お元気そうだから、克服したのだろう。それなりに大変だった筈
だけど、今は淡々としておられるのだと思う。
『でね、2年前に脳梗塞で入院してね。今は元気なんだけど、なんだか
先日、胸がきゅ~っと痛くてね、だけど、それ一回だけなんだけど、
心配になって検査にきたの・・・。』
私は脳梗塞の方が気になる。
『で、その脳梗塞のほうは大手術ですか?』
『いえいえ、姉と電話で話していたら、なんだかロレツがおかしいわよって
言われて病院に行ったら、即、入院。あとは薬だけでした。
早いと軽く済むみたいですね。』
私はほっと安心。要するに変だと思ったら、すぐに病院にいくことらしい。
で、その後は四方山話。サバサバしていて、ズバズバ話すから、分かりやすい。
ニュージーランドに5年間行っていたこと。ご主人の仕事関係で其の後、スエーデン
へ。今は親も看取り、子供は片付き、二人暮らし・・・なんだって。
『じゃあ、英語はペラペラですねえ。』と私は羨ましいの、上ずった調子で聞いたら、
『全然。』と即答。
ははは、何事にも、明快でキッパリ。こういう性格は羨ましいですねえ。
其の後、検査室に入って、血管を広げる薬を注射して、やや、気分の悪い
思いをしたけど、ものの10分もかからない検査終了。
このオバちゃんとの出会いが気分を明るくさせてくれたみたいで、なんとなく、
《人生はケ・セ・ラ・セラかな》と帰ってきました。このおばちゃん、73歳だって!
白いTシャツにカーゴパンツ。ただ者ではありませんねえ。