Acousphere Live 2016.10.11 吉祥寺Star Pine's Cafe

2016年10月11日(火曜) 吉祥寺スターパインズカフェにてスペシャルライブイベント「Acousphere with Friends」を開催します! 
Acousphere Recordに所属するアーティストが一同に集うライブをお楽しみください!
日にち:2016年10月11日(火曜)
場所:吉祥寺スターパインズカフェ 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
出演:Acousphere / Acoustic Sound Organization / Aerial / Sonascribe
時間:Open 18:00 / Start 19:00
前売り ¥3,900+1drink / 当日 ¥4,900円+1drink
詳細はこちらをご覧下さい!

2011年12月21日水曜日

《晴子情歌 下巻》

今年の年末は早めに仕事を終わりにして、
日頃読めない、読めないと不満だった本に
没頭しています。
今回は《晴子情歌 下巻》を終わらせました。
で、レビューです。

高村薫さんはあまり女性を書きたがらない、とは

私の感覚でした。しかし、今回の晴子は見事に

描かれています。

高村氏は《女性の行動は男性ほど分かりやすくない。

女性の行動は複雑だ。》と言っています。

ここに登場する晴子も単純ではない。

こちらが望んだわけでもない男に好意を持っていた

とは思えぬのに、その人の子供を産んだり、

自分の子ではない子供を引き取ったり、かといって

周りを恨んだりもせず、卑屈にもならない。

淡々と生きる大正生まれの女がいる。


この晴子が息子彰之に自分の人生を綿々と綴って手紙を書く。

辛かったでもない。

周りが、時代が憎いというのもない。

後悔などは微塵もない。

だからといって、キリスト教的な神の思し召しだから

甘んじて受け入れるというのでもない。

そこに自分がいきているから、望んだ訳でもないが、

激しく拒むほどの抵抗もない。

ただ、そのままの流れがある意味生きていくことなんだと思う、

という仏教的な生き方が滲みでている。


高村氏は常日頃から、《職業によって、人間が確立する。

人というものはそういうものだ。》とおっしゃっている。

この下巻も鰊漁の様子が生き生きとえがかれていますが、

特に、一緒に働く足立という男の戦争体験や、そのことによって、

病んで崩壊していく人間模様の描写は凄まじいです。

そのことによって、あの戦争の悲惨を、忘れ勝ちな戦争を

慄然として、思い出します。


高村氏は晴子の生きる大正、昭和の時代を、晴子が預けられて

生きた福沢家という大所帯の中で暮らしている人間模様の中に

その時代を語らせています。

福沢家の当主勝一郎に焦点をあてて、戦後の日本の政界を活写

しています。

息子彰之の生きた大学紛争の時代は叔母の公子や従兄弟たちを通して、

時代を語っています。

私はこの彰之とほぼ同時代の昭和を生きて来て、大学紛争も

ちょうど終息するかの時代に生きていました。この近代史

を総まとめするように、自分の生きてきた時代を回想する。

そんな感傷も持ちつつ読んでいるうちに、ここに描かれる

彰之本人、父親の康夫、叔母の公子などが、この時代の空気

の中であがいている姿はそのままこの時代の世相を表しています。

高村氏の描く人間は実に興味深い。



面白かったですねえ。ナンドもいいますが、
この時代の空気が思い出されて、感慨深いです。