Acousphere Live 2016.10.11 吉祥寺Star Pine's Cafe

2016年10月11日(火曜) 吉祥寺スターパインズカフェにてスペシャルライブイベント「Acousphere with Friends」を開催します! 
Acousphere Recordに所属するアーティストが一同に集うライブをお楽しみください!
日にち:2016年10月11日(火曜)
場所:吉祥寺スターパインズカフェ 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
出演:Acousphere / Acoustic Sound Organization / Aerial / Sonascribe
時間:Open 18:00 / Start 19:00
前売り ¥3,900+1drink / 当日 ¥4,900円+1drink
詳細はこちらをご覧下さい!

2010年12月3日金曜日

『乳と卵』

『…とさらに冷っ、が増した声で冷り女子は静かに
言うと、は、じゃあさ、あなたがしてるその化粧は
男性精神に毒されたこの世界におかれましてどういう
位置づけになんのですか、その動機は一体何のために
してる化粧になるの、化粧に対する疑いは?と胸女子
が言えば、これ?これは自分のためにやってんのよ、
自分のテンション上げるためにやってんの、と冷っと
女子、それを受けて胸派女子は、だからあたしの胸だって
自分のために大きくしたいってそういう話じゃないの?』

普通なら読まない新人の若い女性の作品、増して
『芥川賞』『直木賞』などの冠の付いた作品には食指が
のびなかった。
なんとなく、パラパラとめくって、
"頑張れば、面白くなってくるかなあ〜"と粘ってみた。
改行はなく、
会話の部分が括弧がついたり、つかなかったり
句読点は少なく、
読点が多く、
文章が長い。
だけど、嫌ではないな〜と思いながら、
いつのまにか所定の椅子に
(最近嬉しいことに自分の机、椅子を快適な
環境にして、文字どおり読書三昧になった!)
座って、読み入っていた。

これのどこがアクタガワ賞なんだ!
と訝り始めた途端、この川上さんが牙を向いて
最近の女の子の怜悧な現実透視の眼を一見
どうかしていると思われる女子二人の掛け合いに
どうだ!というように披露してくる。

最近の女の子は変わった!
というより、時代が作り出してきたのだろう。
私がこの時代の女の子なら、
もっと、変わったことを言い、
もっと変わったことをコトを言うが為に
もっと、時代を見つめて、苦しまねばならなかった
だろう。

『…性別の関係しない文化であんたの行動だけは純粋な
人間としての知恵ですってそういうわけかよ、なんじゃそら、
大体女がなんだっつうの。女なんか、ただの女だっつうの
女であるあたしははっきりそう言わせてもらうっつうの。
まずあんたのその私に対する今の発言をまず家に帰って
ちくいち疑えっつの。…』

戦後60年の間に社会も技術もめざましくかわった。
特にこの日本の60年は他に類が見られないほどの
かわりようではないだろうか。
私は幸い旅館の娘であったから、一般家庭よりは時代の
空気を察知できるところにいたと思う。
今でいうビジネスホテルのようにひと月一回泊りにくる
お客様の話を聞くともなしに育った。
そして、仕事に必要な機械は進歩的な父によって、いつも
最新式だった。
電話の普及、テレビもいち早く設置したし、洗濯機や
皿洗い機もそう。ホテルへの移行も父の決断だった。
時代の流れにちゃんとのってきていたのだ。

そして、一番に変わったのは女性の生き方ではないだろうか。
今の女性は幸せかどうかは個人で決めることだろうけど、
少なくとも、自分で決める事ができる時代になった。

私が大学の頃、1960年代の後半、冒頭のような事を言ったり、
書いたりしたら、総スカンだったろうし、理解されなかったと思う。
しかし、『男と女』や『第二の性』の著者、ボーボワールを
知って、唄の文句じゃないけど、
"貴方好みの女になりたい"なんて、
決して思わなかった。
"夫の言うことが家のきまりなんですう"とか、
"夫が言うので、ズボンははかないの"
"夫が長い髪が好きだと言うから…"
という女性を
"なんと、まあ"と慨嘆していた。
誰かに決めてもらうのはかんたんだわね!と心の中で
軽蔑だった。

で、何事も自分で決めるのは結構大変です。
何てったって、考えなきゃね。

川上未映子さんの『乳と卵』
面白くて考えさせられる。
女だって、人間です!と言ってます、大声で。