ものを纏めたものです。
この年、大阪万国博覧会を初めとして、大きな事柄が
相次いで起きています。
特に衝撃的な三島由紀夫の割腹自殺は世間を、世界を
驚かせました。そして、その為に司馬さんは思想と
いうものは何かを言及して、あとに続くものを止めようと
しました。
よど号のっとり事件や浅間山荘事件、そして、札幌
オリンピックなどがそれに続いた時代です。
この巻でもあらゆる角度のエッセイを書いておられますが、
私は何と言っても《わが空海》が圧巻だと思います。
後に司馬さんは《空海の風景》を書いておられます。
私が司馬さんを読みたいと思ったまさにそのものが
司馬さんによる仏教の考えかたでした。
勿論、空海の風景の中にある“余談ながら”も面白い
でしょうが、こういう書いている途中のこぼれ話は
また格別のような気がします。
空海と最澄は真言密教を学ぶために長安をめざしたのですが、
その才能の違いは歴然としていたとか。
司馬さんに拠れば
『空海は少年の頃から稀代の秀才であったらしい。
らしいというより日本史上最大の秀才をあげよと言えば、
やはり空海であろう。
彼は大学在学中、音博士について語学をやったために、
のち入唐するとき現地の教養人を驚かすほどの文章と
会話の能力を、すでに身に付けていた。』
こういう文章を読んでいると日本人である事がなにか
自慢に思えてきてしまうのは私だけでしょうか。