かつて高村薫さんは「マークスの山」や、「レディ・
ジョーカー」「神の火」などの社会派物、事件物、を
書いて、かなり硬派の作者でした。
が少し前に《日本語の美しさを考え直したい》と書いた
のが『晴子情歌』。
今までの事件物と違って母子の手紙のやり取りを通して
親子の人生を、はたまた日本の戦後を語っていくの
でしたが、上・下巻を読むのはエンタテインメントが
薄い分読みこなすのが大変でした。
そして、今回の老人4人組のお話は抱腹絶倒物。
これぞ今の日本をシニカルに捉えて言いたい放題。
私、イチ読者としては、イチババアとしてはそうだ、
そうだとヤンヤヤンヤの喝采と、読みながらニンマリ
しておりました。
ホント、ココまで言って良いの?と心配してました。
元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さんが
日がな1日お茶をすすりながら、麓からやって来る
珍客を手玉に取りつつ相談に乗る振りをする。
地域振興だ、霊感商法だ、保育園増設だ、老人ホームだ、
狸の子供を集めてAKB48だ、ヤレ、温泉だ、ヤマメ
の養殖だ、はたまた地獄の閻魔大王がやって来て経営
が行き詰まっているのの相談に乗る。
よくまあココまで・・・の面白さです。
でも、やはり、冷静かつ緻密な筆の使い方にこの人の
真骨頂があるのでは。
『照柿』『神の火』『地を這う虫』『李欧』など
切ないほどの人間の業を感じて今も思い出すだけで
心を揺さぶられる気がします。
(そうだ温泉に行こう)ではなく(そうだ李欧に行こう)
さて、あの本何処に有るかな?