今までのお酒造りは白米を使って発酵させる
のが一般的でした。しかし、白米と書いて
『粕』と読むように、栄養はありません。
そこで本来の栄養たっぷりの玄米を使って
お酒を作ろうとします。
ところが、米麹を作るのに、玄米ではどうやっ
ても麹菌が米の中に食い込んで行きません。
固い皮で覆われた玄米ではどうやっても、
麹菌が食い込んでいかないのです。
麹菌の役割は米のデンプンを分解して糖化
する事が主なのですが、これは麹に含まれる
アミラーゼと言う酵素が働くからです。
昔の噛み酒はこのアミラーゼに頼ったもの。
面白い事に、女性が噛むと、お酒はとても
美味しく醸されるのですが、男が噛むと発酵
せず腐ってしまうのです。
さて、寺田さんはその後、伊勢神宮の神嘗祭
に供えられる品物の生産について講義を聞き
玄米酒作りのヒントを発見します。
『米のデンプンを糖化する力は、唾液のアミ
ラーゼや発芽時のアミラーゼが最も強い。』
『なるほど!玄米を水に浸けて、発芽させれ
ば良いんだ。』
玄米は精白米と違って脂肪やたんぱく質が多く、胚芽の部分にはミネラルなどの栄養も
豊富な為、菌にとっての栄養が普通より多い
状態になる。だから、菌の働きがより活発
になり、発酵し易い。
この取り組みが始まってから、商品化するまで
7年が費やされました。
商品名は『むすひ』。
原料はコシヒカリの生産者藤崎芳秀さんの
玄米。
この玄米は無農薬というだけではなく
不耕起で栽培された力のあるお米だそうです
さて、この『むすひ』なんと、うまくない!
酸味が強く、香りも独特。その摩訶不思議な
雑味と言ったら、端麗と賞賛される吟醸酒たち
と同じ日本酒のくくりに入れるのはどうか
・・・。
で、次回に続きます。