Acousphere Live 2016.10.11 吉祥寺Star Pine's Cafe

2016年10月11日(火曜) 吉祥寺スターパインズカフェにてスペシャルライブイベント「Acousphere with Friends」を開催します! 
Acousphere Recordに所属するアーティストが一同に集うライブをお楽しみください!
日にち:2016年10月11日(火曜)
場所:吉祥寺スターパインズカフェ 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
出演:Acousphere / Acoustic Sound Organization / Aerial / Sonascribe
時間:Open 18:00 / Start 19:00
前売り ¥3,900+1drink / 当日 ¥4,900円+1drink
詳細はこちらをご覧下さい!

2012年7月4日水曜日

《旋盤は二刃より芳し》

堀江敏幸さんの《いつか王子駅で》
前回の《燃焼の為の習作》に似た雰囲気の作品です。

ここでは主人公が王子駅周辺に住み、その町の
居酒屋の女将やそこで会う腕利きのハンコ職人
"正吉さん"をめぐってみんながそれぞれに心配する設定。
主人公は翻訳業をするかたわら、家庭教師もしている。
中学生の咲ちゃんの勉強をみているのだが、この咲ちゃん
は長いすらりとした足の持ち主。
陸上部でこんどマラソンに出るという。

今回は島村利正の作品《残菊抄》への想いや堀江さん独特の
解説が興味深いですねえ。

"あいまいに複雑にしてかそやかな陰影をほどこされた男女の、
あるいは親子の感情の切れ端がすこし言い足りないくらいの表現
からじわりと湧き出てくる。
そういう印象がすべての作品にうっすらとした靄のように
覆いかぶさっていて、・・・"
という評論を読めば、この島村さんの本にのめりこんでみようかと
思ってしまいます。

私たちは退屈な日常をいかに反復すべきかをみずからに問いかける
とき、散歩の途中で草野球を眺めたり、図書館でひがないちにち本を
読んだり、こうなったらいいなと埒もない空想にかまけたりしながらも
畢竟、こうした『子供心に似たほのかな狼狽』を日々感じるか否かに、
大袈裟だが、人生のすべてがかかっているとも思う。
と主人公に言わせています。
堀江さんは作家ですから、勿論そうなんだと思いますが、相当な読書家
であり、どの作品にもその時に相応しい本を取り上げ、それを通して
作品の伏線にしたりしています。
そのお陰で新しい作品に出会えたりするのは楽しいですが、こういう
小説作法をなんというのか。

そして、話しの中盤に入って、大家のところへ家賃をはらいにいくと
ベテラン旋盤工の職人がいる。
腕利きの職人てなもんはな、と話しが始まる。この林さんは中指がほんの
少しばかり欠けている。
ここで、《旋盤は二刃より芳し》が出てくる。
本来は《栴檀は双葉より芳し》ですが、さて、どういう訳でしょう。