巧いよねえ、実に巧い。
見事にこの帯の文言につられて買い、読み、一日夢中になって読んで
しまった。
お陰で首が痛い。
そして、でも、読後感は爽快じゃなかった。
なんせ、あのような死に方をした人だった・・・と今更ながら思い出して
いるのだから。
そして、命について何らかの事が書いてあるのだから、
警戒すべきだったのでは。
そして、あの頃の時代が色濃く残っているこの作品。
三島好みの重厚な絢爛たる、黴臭い部屋。
悪趣味とも思える鹿鳴館的、あの時代好みのこれでもかと思える、ごて
ごての装飾の調度品。
やっぱりこういう部屋が出てくるんですね。
人間の滑稽なほどの生真面目さや、醜さや、人生の無意味なことや、
肉体に対する劣等感や、などの文言が
彼の作品を読んでいる頃の自分の大学時代とともにが蘇ってくる。
私のあの若い頃の剣道体験とともに思い出された。
あの時、40数年前、同じ体育館で三島氏とともに同じ場所で昇段試験を
受けた時、遠くから彼の姿を眺め、少し興奮しながらも、意外に小さいん
だなあ~と親近感を持った事などをおもいだした。
読み終わってから、ほお~っと深いため息をついてから、そうそう
あんな事があったっけ、とおもいだしたのだ。
結婚した年の暮れに近い頃、市ヶ谷の側を車で走りぬけた。
そのあと、なんだか身辺がうるさくなり、ヘリコプターがなんだか騒音を
たてながら頭の上を飛び始めた。バリバリ、ばりばり。ば、ば、ば、・・・。
家に帰って、テレビをつけると三島さんのニュースだった。
あれから、40数年経っているのですねえ。