Acousphere Live 2016.10.11 吉祥寺Star Pine's Cafe

2016年10月11日(火曜) 吉祥寺スターパインズカフェにてスペシャルライブイベント「Acousphere with Friends」を開催します! 
Acousphere Recordに所属するアーティストが一同に集うライブをお楽しみください!
日にち:2016年10月11日(火曜)
場所:吉祥寺スターパインズカフェ 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
出演:Acousphere / Acoustic Sound Organization / Aerial / Sonascribe
時間:Open 18:00 / Start 19:00
前売り ¥3,900+1drink / 当日 ¥4,900円+1drink
詳細はこちらをご覧下さい!

2015年7月22日水曜日

大人のいない国

『え~、それではお開きの時間になりましたので・・・。』


私は昔からこの定型句が大嫌いで、この役を仰せつかるのを

極力避けていました。


この定型句には心がこもらない、もっと、万感こもる言葉があるのでは、

少なくとも、ある程度の歳になったら、もっと気の利いた言葉を探して

言えるのでは、と思っていた。


しかし、内田さんは映画『彼岸花』で佐分利信が結婚式でスピーチを

するシーンがあると言います。

『うたた感慨にたえぬものであります。』

この定型句の文言の中に万感がこもっている。

下手な言葉を羅列するより定型句を淡々と語り、その決まり文句に

感情を込める。


私が50代の頃は職場では年長と言われ、知識では劣るにしても、

社会の決めごとや冠婚葬祭などの時には、なんとなく御任せします

という事になり、前に出されてしまう事が多かった。

特にお葬式の時は後ろに続く若者が私と一緒に挨拶を済ませてしまおう

と、後ろからついてくる。

お葬式の文言はなるべくはっきり言わないで口の中でモゴモゴさせ、

済ませてしまおうという人が多く、前の人が何を言うのかを聞こうとしても

聞こえない。

しかし、こういう場でヒトと違う言葉で目立つのは気持ちが悪い。

で、小さい声で、

『このたびはご愁傷様でした。どうぞ、疲れがでませんように・・・。』と

後ろの若い者には聞こえるようにはっきり言う。


内田さんはこういう時、首を縦か、横にふりながら、

『なんと、申し上げたらいいか・・・』と言うそうだ。


結婚式も同じで、出来るだけ定型的な祝辞を淡々と言って、それでも行間

から万感が滲んでくるという芸をそろそろ身につけなくてはと思うんです、と

言っています。


ヒトはその時、その時で、いや大人と言う者は場所や、場合によって、演劇的

なある水準で伝えることによって、相手もそれにふさわしい応答をするように

巻き込む。恋心や人間の情念みたいなものを別の水準に一段上げてしまう。


定型や謡などからの引用である言葉はまず、

『貴方の本音とは決して、受け止めません。うたっても、聞かなかったことに

します。』という顔つきで聞ける。

だから、言いにくいこととか、本当の思いを、逆に、ものすごく形式的に伝える。

例えば、形式的な演技では土下座がある。これをされたら、相手は逆に

負けざるをえない。


『本日はお日柄もよろしく・・・』という改まった言い方に思いがこめられる。

ここに日常との水準差が現れ、大きな意味が出てくる。


内田さんは言います。

大人になるということは、この水準差を自在に変えられる事。政治を語る時も

人間関係のいろんなトラブルも、全部、次元を変えたふるまいと言葉でできる

のが大人。

だから、水準差がなくなっている今は大人のいない状態だと。

公人に求められているのは公共的なことについて、ステートメントをしているの

だけれど、そこに、さまざまな余情を託すことができ、その余情がにじみだすのは

言葉の意味のレベルじゃなくて、発声とか、ぴっちとか、姿勢とか、表情とか、

そういう身体的なところで。

言葉そのものは定型的に流れていく、でも、意味がずしりと重い。

これが本来公人に求められている言語活動である。

今の公人達の言語はほとんど中学生レベルだとも言っています。


ところで、冒頭の『この辺でお開き・・・』が何故嫌いか・・・と突き詰めて考えたら、

私は酒席が嫌いだったんですねえ。