『はい、お待ちどう!』
威勢良く運ばれて来た親子丼、デカ!
全部食べられないな・・・仕方がない、残す
しかあるまい。
歩き回っているうちに時刻は既に2時半。
家に帰って作って食べる・・・なんてことは
チョット無理そう。相棒には何か食べてくだ
さいと連絡して、初めて入った蕎麦屋さん。
私が最後の客らしく私と入れ替わりに出て行
った叔父さんがいなくなるとシーンと静かに
なった。
親子丼を食べていると、隣のテーブルの椅子
に誰かが座った。風が動いた。私に背を向け
てうなだれたようにしている。
疲れた〜という溜息が聞こえそうで、ある。
裏では壮年の御主人とお手伝いの40位と思し
きお姉さんが大声で話している。
『・・・ほら、パイレーツ・カリビアンの
ジョニー・デップって知ってる?』
『はいはい、ええ。結構見てます。』
・・・
『ダスティン・ホフマンはさあ、あの卒業っ
ていう映画で有名になったんだよ。音楽も
ハヤッテネエ。』
で、歌い始める、いやハミングし始める。
お客がいるなんて考えていないみたい・・・
『あのイージー・ライダーね。別にどうって
事ないスジだけど、あの最初の場面のオート
バイがさあ 〜、かっこよくてさあ 〜、俺、
乗りたくってさあ。』
『へえ、そうなんですかあ』
新人のお手伝いさんなのか必死に相手をして
いる様子。
ここも人手不足なんですねえ、側に座った
おばちゃんはどう見ても80代。もう、働くの
はきついのでしょうね。
私も早々に退散しなければ。
でも、お手伝いさんのなんと、声の綺麗な事
お勘定を払ってお釣りを頂いて、天は二物を
与えず・・・とは良く言ったものだと感心し
た。
しかし、このお店に入って外を眺めていると
自分がほとんど毎日のようにココを通って
いる事が不思議であり、ここのお店は4、50
年も前からこのようであった様で、迷宮に入
りこんだ気がした。たった、30分くらいで
あったと思うけど、異次元から抜け出てきた
ようだ。